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指標生物とは? |
水の中に住む生き物は、自分たちにとって一番居心地のよい場所に、多く棲んでいます。
きれいな水を好む生き物はきれいな水の中に、汚れた水を好む生き物は汚れた水の中に、かたよって棲む傾向があります。この傾向は、水に住む生き物であれば、多かれ少なかれ、ほとんど全ての生き物に当てはまりますが、魚と違って同じ場所にとどまって生息することが多い底生生物では、特にはっきりと見られる傾向です。 そこで、ある場所に住んでいる底生生物を調べて、どんな水を好む生き物が多く住んでいるかを知ることができれば、その場所の水のきれいさの度合いを、大まかに知ることができます。その判定に利用される生き物を、指標生物といいます。
水の汚れと一口に言っても色々と種類があります(pH、水中のリンや窒素などの有機物の濃度など)が、生き物の生息に最も強く影響するのは、水中の酸素の量です。水中の酸素は、水温が低ければ多く溶け、水温が高ければ少ししか溶けません。また、水中の微生物が少なければ、酸素の量は多くなり、逆に微生物が多ければ不足します。そのため、水温が低く微生物の少ない上流に行くほどきれいな水の指標生物は多くなり、水温が高く微生物が多く生息する下流に行くほど、きたない水の指標生物が多くなる傾向があります。
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指標生物として利用される底生生物の条件としては、次のようなものがあります。
●特定の水質の場所にかたよって多く棲む傾向がある。
●日本全国どの河川でも、容易に見つけることができる。
●肉眼ではっきりと確認することができる大きさである。
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水質階級 |
指標生物を利用した水質判定では、判定する水域の水質を、水のきれいさの度合いによって、「きれいな水」「少しきたない水」「きたない水」「大変きたない水」という、4段階の階級に分けます。それぞれの水質階級が表す水域の環境は、おおよそ以下の通りです。
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●きれいな水・・・・・・河川の上流域、渓流など
●少しきたない水・・・窒素やリンなどの有機物が少し流入した、河川の中流域
●きたない水・・・・・・河川の下流から河口にかけての水域、田園環境など
●大変きたない水・・・廃水流入口などの、著しく汚染の進んだ水域
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指標ごとの生き物の紹介 |
指標生物として利用されている生き物にはどんなものがいるのか、大まかに紹介します。
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調査において、すべての指標生物を確認できたわけではありませんが、確認できていないものも含め、まとめて紹介しています。 |
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注:指標生物の中には、多くの種を含む「~のなかま」というような指定を受けているものもあります。そのため、指標生物の名前と図鑑ページの生き物の名前が一致していない場合があります。
例:タニシとヒメタニシの関係
指標生物として指定されているのはタニシの仲間全体です。その中にはおよそ4種類の仲間がおり、図鑑ページに記載されているヒメタニシはその中の1種です。
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「きれいな水」の指標生物(全9種) |
調査で生息が確認されたもの(4種) アイコンをクリックするとそれぞれの図鑑ページへジャンプします。
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河川上流域の石の下に生息。水質の変化にやや弱い。 |
河川上流域の石の下に生息。種類がとても多い。 |
河川上流から中流にかけて生息。トビケラでは珍しく巣を持たない。肉食の幼虫。 |
上流域の大きな岩などに、吸盤でくっついて生活している。 |
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確認されなかったもの(5種) ※未確認のため、図鑑ページはありません。
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ロボットのような外見。渓流に限って生息し、水質の変化にとても弱い。 |
河川上流から中流にかけて生息。昼間は石の下でじっとしている。 |
平たい体は、急な流れにも耐えられる。渓流に多く生息。 |
河川上流から中流にかけて生息。大きなアゴを持つ肉食の幼虫。 |
ずんぐりした体。砂粒の巣を携帯する。ゆるやかな流れの、石の表面に生息。 |
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「少しきたない水」の指標生物(全9種) |
調査で生息が確認されたもの(7種)
アイコンをクリックするとそれぞれの図鑑ページへジャンプします。
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河川の瀬に生息。網を張って待ち構え、かかった獲物を食べる。 |
細長い殻を持つ。巻きは6層。石や壁の表面にくっついて生息している。 |
河川上流域から湖に至るまで広く生息。平べったい体のヤゴ。 |
流れに向かって網を張り、獲物を捕らえる。河川の瀬の礫(れき)の表面に生息。 |
透明な体をした小型のエビ。水生植物の陰などに多く生息。 |
体全体を吸盤のようにして岩に張り付く。流れのゆるやかな河川に多く生息。 |
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カワニナを食べて成長する。幼虫も発光器官を持ち、尾部が光る。 |
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確認されなかったもの(2種)
※未確認のため、図鑑ページはありません。
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球形の殻を持つ巻き貝。汽水域(淡水と海水の混じった水域)に生息。 |
食用にされる二枚貝。汽水域(淡水と海水の混じった水域)に生息。 |
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「きたない水」の指標生物(全7種) |
調査で生息が確認されたもの(6種)
アイコンをクリックするとそれぞれの図鑑ページへジャンプします。
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大型の肉食水生昆虫。水の汚れに強い。動きはあまり速くない。 |
よく見かける巻き貝。水の汚れに強く、用水路などにも多く生息する。 |
体の裏に吸盤を持ち、岩に張り付いて生息している。様々な種類がいる。 |
大型の肉食水生昆虫。長い尾のような呼吸管を持つ。水生植物の陰に多く生息。 |
見た目は平たいダンゴムシ。腐植物の多い環境を好む。 |
ダンゴムシのように体を丸める。汽水域(淡水と海水の混じった水域)に生息。 |
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確認されなかったもの(1種)
※未確認のため、図鑑ページはありません。
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長い触角や脚を持つ。汽水域(淡水と海水の混じった水域)に生息。 |
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「大変きたない水」の指標生物(全5種) |
調査で生息が確認されたもの(4種) アイコンをクリックするとそれぞれの図鑑ページへジャンプします。
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北アメリカ原産の外来種。用水路や水田など、様々な場所に生息。 |
尾の先が何本にも枝分かれする。酸素のあまりない場所でも生息が可能。 |
ヨーロッパ原産の外来種。繁殖力がとても強い。殻が左巻き。 |
下水溝などに発生する不快害虫。種類が多い。 |
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確認されなかったもの(1種)
※未確認のため、図鑑ページはありません。
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ユスリカの幼虫は多数確認されましたが、確実にセスジユスリカだと同定できるものがなかったため、ここでは未確認としています。 |
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体全体が赤い色をしている。酸素のあまりない場所でも生息が可能。 |
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水質の判定方法 |
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上に挙げた指標生物を利用して、実際に水質の判定を行ってみましょう。簡単な足し算で、難しい計算は必要ありません。 |
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計算方法
- 見つかった指標生物1種類ごとに、その指標生物の属する水質階級に1点を加えます。
見つかった指標生物が1匹でも10匹でも関係なく、1種類につき1点です。
- 見つかった数がもっとも多かった指標生物と、その次に多かった指標生物は、さらに追加で1点を、その指標生物の属する水質階級に加えます。
もし、2番目に多い指標生物に2種類以上が当てはまったら、同率2位の指標生物すべてをカウントします。
- 1と2の計算が終わった時点で、最も点数が高かった水質階級が、その地点の水質になります。
同じ点数の水質階級が2つ以上出た場合は、より良い水質の方が当てはまります。
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<例>ある地点で確認された指標生物の種類と数が、次の通りだったとします。
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カワゲラ 6匹 |
サワガニ 2匹 |
スジエビ 12匹 |
ゲンジボタル 6匹 |
ミズムシ 3匹 |
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↓ |
まず、それぞれの指標生物を、4段階の水質階級に区分けします。
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きれいな水 |
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カワゲラ 6匹 |
サワガニ 2匹 |
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少しきたない水 |
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スジエビ 12匹 |
ゲンジボタル 6匹 |
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きたない水 |
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ミズムシ 3匹 |
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↓ |
次に、確認された指標生物1種につき1点を、それぞれの水質階級に加算します。
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きれいな水 |
+2点 |
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カワゲラ 6匹 |
サワガニ 2匹 |
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少しきたない水 |
+2点 |
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スジエビ 12匹 |
ゲンジボタル 6匹 |
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合 計
きれいな水・・・2点
少しきたない水・2点
きたない水・・・1点
大変きたない水・0点
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きたない水 |
+1点 |
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ミズムシ 3匹 |
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↓ |
そして、最も個体数の多かった2種は、さらに追加で1点を加算します。最も多かったのはスジエビです。2番目に多かった種は、カワゲラとゲンジボタルで同数のため、両方に加算することになります。
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きれいな水 |
+1点 |
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カワゲラ 6匹 |
サワガニ 2匹 |
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少しきたない水 |
+2点 |
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スジエビ 12匹 |
ゲンジボタル 6匹 |
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加 点
きれいな水・・・1点
少しきたない水・2点
きたない水・・・0点
大変きたない水・0点
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きたない水 |
+0点 |
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ミズムシ 3匹 |
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↓ |
計算を終え、それぞれの点数を比べてみると、「少しきたない水」の点数が最も多くなりました。そのため、この地点の水質階級は、「少しきたない水」ということになります。
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きれいな水 |
3点 |
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カワゲラ 6匹 |
サワガニ 2匹 |
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少しきたない水 |
4点 |
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スジエビ 12匹 |
ゲンジボタル 6匹 |
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合 計
きれいな水・・・3点
少しきたない水・4点
きたない水・・・1点
大変きたない水・0点
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きたない水 |
1点 |
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ミズムシ 3匹 |
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こうして、水質判定の計算が終わりました。単純な計算方法ですが、このようにすれば、どのような水域の水質でも、大まかながら判定することができます。
ただし、この計算で出された結果は、あくまでも「目安」であるということに注意してください。指標生物の生息を決定付けるのは、水の汚れだけではありません。例えば、ある指標生物の天敵の数が増えれば、それだけその指標生物は数を減らします。また、海水の混じった水域にしか生息できない指標生物もいます。川や湖に住む生物は様々な要因によって個体数を増減させるため、指標生物による判定だけで、その水域の水質を測るのは確実ではありません。
また、水に住む生き物にとって、水はきれいであるほどいい、とは限りません。「水がきたない」と言うと、私たちはついマイナスのイメージを抱いてしまいます。しかしそれは、裏を返せば、「栄養が豊富である」ということでもあります。もちろん、過度な富栄養化は生き物にとって良くありませんが、適度な有機物を含んだ水は、様々な種類の生き物を育む、「生命の揺りかご」となるのです。
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